イリリア救貧院

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シスターは同情したように言った。 「大変な思いをしましたね。 あなたはリージというところから来た、と言ったわね」 「はい。リージをご存じですか?」 「いいえ、知らないわ。残念ながら」 「そうですか……。あの、ここはイリリアという国なんですよね」 「そうよ。ここは、イリリア教会に付属の救貧院よ」 「救貧院……ってなんですか?」 「施しを必要な方々のための施設よ。 病気やケガで働けない人や、身寄りのないお年寄り、そういった方が集まって暮らしているの。 あなたも家族とはぐれてしまって、不安でしょうね。 しばらくここに泊まってもかまわないわ」 「ありがとうございます、シスター」 ヴィオラは、深々と頭をさげた。 「とはいえ、あなたが健康ならば働いてもらわなくてはね。 年はいくつなの?」 「もうすぐ十六になります」 「そう。今日はゆっくり休みなさい。明日から働けるわね?」 「はい」 ヴィオラは、顎をひいてうなずいた。
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