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朝のはじまりを告げる鐘が響き渡った。
ヴィオラは、さっそく支給された衣類に着替えた。
木綿のワンピースに、作業エプロン、頭にはバンダナという格好だ。
腕につけた腕章には「イリリア救貧院」という文字が入っている。
「では、さっそくあなたに仕事を与えます。
街の中心の広場に行って、このお花を売ってきてちょうだい」
「はい。分かりました」
手渡されたかごの中には、ユリやダリアといった大ぶりの花がたっぷりと盛ってある。
「ふふ。きれいですね」
「その花を売りながら、あなたの家族を探すといいわ。
だけど、もしも家族を知っている、なんて言われても、おかしな人にはついて行っては駄目よ。
危険なところには行かないで。
暗くなる前には、帰っていらっしゃい」
なんだか、母親のようなもの言いだ。
「分かりました。シスター」
ヴィオラはうなずいて、広場に向かった。
広場は大きく、活気に満ちていた。
牛をつないだリヤカーや行商人が、ところ狭しと行きかっている。
籠に盛られた色鮮やかなフルーツや野菜、ミートパイの屋台。
人々のざわめき、息遣い、こちらまで元気が出そうな呼び込みの声。
「わあ。すごいなあ」
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