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ヴィオラはもの珍しさに、あたりをキョロキョロ見渡した。
とはいえ、見物に来たわけではない。
「きれいなお花はいかがですか?」
ヴィオラが声を張り上げたとき、後ろから人がぶつかってきた。
籠から花が、ふわりとこぼれ落ちる。
あわてて拾おうとしたが、通行人に花を踏みつぶされてしまった。
「ああっ」
「失礼シマシタ」
ヴィオラは顔をあげた。
花を踏んだのは、どうやら異国から来た人のようだ。
頭にターバンを巻いて、浅黒い肌にくちひげを生やしている。
「すまなかったネ。花売りのお嬢サン。
売り物をだいなしにシマシタ。落とした分は買い取らせてもらいマス」
「え、でも」
ヴィオラは戸惑った。
「いいんでしょうか」
「もちろんデス」
買ってもらえるなら助かる、と思う。
「じゃあ……お言葉に甘えさせてもらいます」
ヴィオラがそう言うと、彼は思いのほか多くのお金を払ってくれた。
「こんなにいいんですか?」
彼は、ニッコリしてうなずいた。
「君の瞳は、光の加減で紫色に見えるんデスネ。
とてもきれい。珍しいデス」
「ありがとうございます。よく瞳だけは褒められるんです」
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