第10章 マツカゼソウ(1)

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「そういえば、美玖、あの朝の届け物はもうなくなったの?」  悩んでいると玲奈が美玖にそう言った。朝の届け物? 「うん。三日前からなくなったよ。今までこんなに空いたことないし、多分終わりだと思うけど…」 「え?何?何の話?」 「ああ、香織はその時いなかったか。講義終わった後、急いで出て行ったから」  私が会話に入れずにいると玲奈が思い出したように言った。 「いつの話?」 「先週の木曜日。教育心理学の講義の後」  その日は確かFleurでのバイトが入っていた。ちょっと無理やり詰め込んだスケジュールだったから慌てていたっけか。 「なんかね、最近私の家に毎朝花が届けられてたの」 「花?」 「うん。先々週くらいからずっと定期的に…。色々な花が一輪ずつポストに入れられてる状態が続いてて…」 「それ、親とかには言ったの?」 「ううん。花入れられてるだけだし、そんな大事にするほどでもないかな、って」 「あたしだったら気持ち悪くて即誰かに言うけどね」  サラダをぱくつきながら玲奈が言った。確かにそれだけなら大騒ぎするほどでもないが、気にはなる。 「で、その花は三日前から届かなくなったってこと?」 「うん。今までは一日間が空くことはあったけどこんなに届かないのは初めてだから…多分もう終わったのかなって」 「誰かのいたずらだったんじゃないの?飽きたからやめたとか」 「…うん。多分そうだと思う」  玲奈の意見にうなずきながらもあまり納得はしていないようだった。私も同感だ。何かあるかもしれないじゃないか。 「ねぇ、美玖。その花が何かって調べたの?」 「ううん。どうやって調べたらいいかわかんないし、色々忙しかったから…」 「その花ってどうしてる?捨てた?」 「あ、いや一応とってあるよ。だいぶ枯れちゃったけど」 「まじ?何で?」 「いや、だって大事なものかもしれないし、何かメッセージでもあるのかもって…」 「考えすぎだって、ねぇ香織」  玲奈が私に聞いてきたが私は判断がつかない。しかし判断がつきそうな人なら心当たりがある。私はアジフライを食べ終えて手を合わせた後、こう言った。 「ねぇ二人とも。この後時間ある?」
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