第10章 マツカゼソウ(1)

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「…やっぱ玲奈ってモテるよねぇ」  私は思わずしみじみと言ってしまった。 「え?そんなことないでしょ」 「いや私もそう思う」  玲奈が否定するが、美玖も私の意見に乗っかってきた。 「だっていつも男子に話かけられてるじゃん。やっぱ男子と話せる強いメンタルが必要なのかな…」 「男だってあたしらと同じ人間だって」  美玖がつぶやくと玲奈がそう言って笑い飛ばした。まぁ確かに違う生き物とまでは思ってないけど。  玲奈は結構肉食系というかアピールがうまい。がっつきすぎず、かつ、さりげなく男の心をつかむ感じだ。 「でも男は性欲の権化だって漫画に……」 「高校生かよ」  美玖が言うと玲奈は馬鹿にしたようにツッコんで笑った。 「あ、でも話してると胸に目やるやつ多いわ。間違ってないかもね」 「…そうなんだ」  入口で取ったお盆にサラダを取りながら私は無意識に玲奈の胸に注目する。結構大きいんだよなぁ…。紫も巨乳だったし、やっぱり男って大きい方が好きなんだろうなぁ……。緑川はどうなんだろうか…。やっぱり私より紫みたいな大きい方が……。 「ちょ、ちょっと香織。目怖いって」  ガン見しすぎたせいか、引き気味に玲奈に言われる。暗い思考に陥っていた私は我に返る。 「あ、ご、ごめん」 「そういえばそろそろ文化祭だよね。準備してる?」  慌てたように美玖が話題を変えた。 「うん。うちのサークルはお化け屋敷やるよ」    玲奈が唐揚げを取りながら答えた。私は何にしようか…。 「定番だね。見に行くよ」 「ありがと。美玖は?」 「りんご飴やるって。文化祭でやるのが伝統なんだって」 「定番~。クラスの出し物とかないからみんなバラバラだね。香織は?」 「え?ごめん、何?」  たまには魚食べるかと思ってアジフライに手を伸ばした私は話を聞いていなかった。 「だから文化祭だよ。香織は何やるの?」 「喫茶店だよ。教室借りて中でやるらしい」 「みんな定番だね~。なんか面白そうなところもまわろっか」 「そうだね」  四百八十円になります、という会計の人にお金を払って私たちは移動しながら文化祭の噂について話し合った。どんなところがいいとか、面白そうな出し物やるところとか色々話した。  学食はいつも混んでいるが、大体席は見つかる。私たちは三人分座れる場所を見つけてそこに座った。  いただきます、と言って私はアジフライにかぶりつく。学食は量が多いのに安いというのがメリットで、この大きさで副菜やごはんがついて五百円いかないのはコスパがいい。食べながら私たちは文化祭の話を続ける。 「パイ投げられ屋なんてのもあるらしいよ?」 「え、何それ?」 「そのまんまパイ投げつけられるんだって。友達が投げつけられる役やるから見に行くことになってんの」 「へー…」 「私瓦割りするところ行きたい。空手部がやるんだって」 「香織は変わったとこを攻めるよね…」  玲奈が呆れたように言った。そうだろうか?面白そうじゃないか、瓦割り。 「まぁ色々周ろっか」  唐揚げを食べながら玲奈がそう言った。もちろん賛成だ。賛成なのだが…。 …本音を言うと一緒に周りたい人がいる。もちろん玲奈たちとも周りたいが、どこかであの不愛想なカフェの店長と一緒に文化祭を周りたいのだ。いわゆる文化祭デートだ。しかし誘う勇気がない私は言い出せずにいる。うーん…。
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