ねえ、お父さん

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 このまま家にいれば、私は不幸なまま。  一刻も早く家を出たい。平穏な生活がしたい。  だけど、母の事を思うと躊躇われた。こんな父のもとで、頑張って社会人になるまで育ててくれた母は見捨てられない。  そして母は、こんなどうしようもない父を見捨てられずにいる。  どうして離婚しないの?何度も母に尋ねた。  母は色んな理由をつけては、離婚しなかった。 「行くところがない」「あなたのためよ」  嘘ばっかり。  何が私の為なんだろう。  私なら、絶対に父がいない方が幸せになるっていうのに。  母の本心はわからない。  文句いいながらも、それでも最期まで一緒にいる選択肢を選んだ。  父を憎んでいたの?  それとも、どうしようもない父だけど愛していたの?  結局、最期まで分からなかった。  だけど、自分の思い通りにならなかった人生最期に告げた願い。 『墓にはいれずに散骨して』  母の最期の願いを叶えるべく、その時には立ち会わなくてはいけなかった。  海へと溶けていった母は、自由になれたかな。
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