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癖
俺は涙を流れるに任せて、ぼんやり天井を眺めた。自分の気持ちを分析してみる。散々考えて計画して実行したのに、俺は後悔しているのだろうか。いや、ただ悲しいだけかもしれない。望んだ結果のはずなのに、なんでこんな気分にならなくちゃいけないんだ。
と、突然、部屋のドアがバタンッとすごい勢いで開いた。俺は反射的にベッドから起き上がった。
「やっぱり…泣いてた?」
心配そうな顔をして戸口に立っているのは、息を切らした怜史だった。幼馴染故、怜史は顔パスでいつでも俺の家に上がって部屋に来る。しかし、何故今このタイミング。気まずいったらない。俺は忘れ物でもしたんだろうか。慌てて涙を拭いながら考えを巡らしたけど、答えは出てこない。
「泣いてない。眠くて…涙が出ただけ。」
我ながら、なんて幼稚な嘘なんだろう。しかし、動揺を悟られないようにしなくては。
「もう、嘘吐かなくていいから。」
後ろ手にドアを締めて、怜史はストンと俺の隣に座った。「もう」ってなんだ?それに最初の「やっぱり」って?
「直斗、お前な、噓吐く時の癖があるんだよ。」
その意味するところを察してしまい、かーっと顔が赤くなるのが自分でもわかった。俺の告白が嘘じゃなかったってばれてる。作戦は、大失敗じゃねぇか。
終わった。俺の片思いは、こんなしょうもない形で散るのか。まあでも、そもそもエイプリルフールにかこつけて告白なんてした自分が悪いんだ。怜史には、キモいって思われてんのかな。軽蔑されたかな。
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