紅葉の会〜挨拶

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「三ノ宮当主の妻になったというのにすいは相変わらずね?あ、お姉様だったわ。」 「やめて下さい。美代子様にそう呼ばれてしまうと身の置き所がありません。」 「まぁいいですけれど…(おおやけ)の場では駄目ですわよ。お兄様、忙しいのでしょう?ちゃんと帰ってます?輝興は午前様が多いので睡眠不足の様ですわ。朝食は一緒にと約束をしておりますの。夜はどうしても付き合いで外食が多いでしょう?芸妓さんがいるお店にもよく行きますしね。だからこそ朝食は一緒にと約束をしているのよ。今のところ守ってくれていますがすいは大丈夫?お夕飯、要らない日もあるでしょう?一人で食べるのは寂しいでしょう?」 「大丈夫ですよ。一人分作るのが面倒でおにぎりで済ませてしまう事もありますけど、贅沢過ぎる時間を過ごさせて頂いてます。」 「それならいいのだけれど…お兄様から暫くそっとしておいてほしいと言われていたのですけれど輝興の話では忙しくて帰りは遅いというので、すいが寂しい想いをしているのではと我慢の限界で参りましたの。それに忙しい様でお兄様は相変わらずみたいですから(わたくし)が準備のお手伝いをしなければと思いましたの。」 口に付けていた湯呑みをお客様をお通しする座敷に不似合いなテーブルに置き、一人用の腰掛け椅子の前の方に座り直してすいは訊き返す。 「準備のお手伝いって会社で何かあるのですか?」 久遠が取り寄せたという二人掛けの花柄のベージュのソファに座っていた美代子は体を斜めにし、驚いた顔をすいに向けた。 「すい、お兄様から聞いていませんの?紅葉の会の事ですわ。」 「あ、大丈夫です、聞いております。三ノ宮当主として披露宴を行う予定で紅葉の会は多くの方が参加されるので、紹介がてら披露宴のお話をする、ですよね?」 合ってますよねと、目で訊ねながらすいが話すと美代子は頷いてすいに躙り寄る。 「披露宴、十二月の頭にする予定なの。紅葉の会は十一月。準備はしていますわよね?」 「まだひと月…は切りましたけど久遠様からは何も言われていませんので準備ってドレス、ですよね?それなら久遠様がいっぱい箪笥に入れて下さっていますので大丈夫です。」 自信満々ですいが答えると美代子がため息と同時に首を振っていた。
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