STARDUST

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アカネは約4ヶ月に1回くるこの2Dメールを「保護」した。  現在利用されている多くの連絡手段は、文字や画像が立体的に浮かび上がる3Dメールであり、もう2Dメール対応のタブレットは手に入らない。しかし3Dのみ対応になってしまったら、もうAtom2722-X3からのメールは受け取れなくなってしまう。  アカネは垢のついたタブレットを握りしめた。  Atom2722-X3はただの人工知能ではなく、大事な家族だった。アカネが生まれた日には既に存在していて、アカネが地球からこのくじら座β星団7に出発する日まで、ずっと世話をしてくれていた。  地球は温暖化と寒冷化を経て、超温暖化になった。そしてそれはとても900年は続くという。  しかし、もうその気温に耐えられる技術がなくなってしまった。故に、地球から出る必要があったのである。しかし、資源は乏しくなり人口は増えた。  結果、少ない宇宙船と技術を駆使し、限られた人間は新たな星へ移住することになる。 そこで、若い人間と新しい星で活躍できるだろう人材が、優先して選ばれた。  だからアカネは1人でこの星、くじら座β星団7へ移住することになった。  当時16歳だった。 360°、上も下も進行方向も分からない宇宙船でかなりの月日を過ごし、やっとくじら座β星団7に建った集合住宅に身を置いたのは「移住組」のカレンダー で18歳のときだった。  地球より大きさも重力も回転速度も大きいこの星は、地球よりも時間が進むのが早いらしい。もしかすると、お父さんやお母さんよりも早く寿命が来るかもしれないと、近所の女の子が話していたのを、なんとなく覚えている。
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