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それでも、ひとりぼっちよりかはずっとましだった。ゴロゴロと喉を鳴らせる猫が膝に座っているのは、なんと素敵な気分だろうか。
アカネはタブレットをOFFにし、届いた小さなジェラルミンの箱を開けた。箱の中に黒いスポンジ、その中心にカプセル、さらにスポンジ、そしてーー
「わぁ」
心の準備ができていなかった。
だってこんな丁重に包まれたものから、セミの抜け殻が出てくるなんて思わないから。
茶色いそれは、小さい頃にはとても魅力的であるが、大人になってみるとなんとなく嫌なものになる。噛んだり飛んだりしないのは分かっている。だから怖いわけではない。しかし、気持ちがわるいのだ。
それでも、どうしても手に取らずにはいられない魅力もある。
透明感と艶感、軽さ、腹部の柔らかさ、温かみとチクチク感ーー。
たくさん集めて楽しかった思い出が目が眩むほど溢れ出し、まだ暑過ぎなかったあの頃の夏の匂いが、どこからか立ちこめてくる。そして夏の音が、祝福の音楽が、耳の奥で鳴り始めるーー。
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