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第一章:マドンナの憂鬱
「ごめんね」
赤や黄色の落ち葉が音もなく舞い落ちる公園で、降りて引く自転車のハンドルを掴んで支えたまま、心から済まなそうに見える笑顔で告げる。
「私はそういう意味では好きになれないから」
下校途中の私を近くのこの公園まで誘導した相手はショックよりも“ああ、やっぱりな”という諦めの強く現れた顔になる。
これは記念受験的な告白をしてきた人にありがちな反応だ。
「鈴木君が悪いんじゃなくてね」
出来るだけ励ます風に語る。
「私は元からそういう意味で好きになった人がいないから」
むしろ、良く話したこともない私にそんな気持ちが持てるこのクラスメイトみたいな人こそ素直に凄いと思えるけれど、そんなことまでここで伝える必要はない。
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