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*男*
目は閉じたものの眠れるわけなんかない。
殺そうとした女が心配でそばにいるなんて、俺は結局なにがしたいんだ。
自暴自棄になってはなかった。追い詰められるだけ追い詰められて、それでもそんな俺を俯瞰して見ている冷静な自分がいた。
昔からそうだ。多分、それが自分を守る手段だった。
今回はもうダメだというところまできて、周囲に対する復讐心みたいなものもあって犯罪を犯そうとした。
俯瞰して見ている自分が言う。
『馬鹿げたことだ。』
と。
そうだ、こんなことをしても復讐なんかにはならない。周囲は
『やっぱりな。』
『厄介払いができた。』
ぐらいにしか思わないだろう。
常夜灯のついた薄暗い部屋で、やがてうとうとと眠りについた。
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