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プロローグ
*女*
『早く、早く帰らなきゃ。』
だんだんと冬が近づき、顔に冷たい風が当たる11月下旬、私は家に戻るために急いでいた。
寒さはそれほど感じないけれど、今夜から本格的に寒さが到来すると、先ほどまでいた繁華街のビルの電光掲示板が伝えていた。
やっとマンションに辿り着き、階段を上がって2階の一番奥の部屋の鍵を開けてドアを開け入ろうとした瞬間、後ろからドンッと押され振り返ると男が立っていた。
「声を出すと殺すぞ。」
*男*
寒さが感じられる11月下旬、俺は繁華街から少し離れた住宅地でターゲットを探していた。
誰でもいい、なんて嘘だ。抵抗されそうにない弱そうな人間を選ぶ。
電柱にもたれていると、二つ先の角を曲がってきた女が目に止まった。
この寒いのに割と軽装で、一心不乱というか、周囲を気にせず歩いているように見える。
後をつけていくと、おあつらえ向きに人気のない道に入り、マンションに入って行った。
足音を忍ばせて階段を登り、女がドアを開けた瞬間、ドンッと背中を押し、ドアを閉めて鍵をかけた。
「声を出すと殺すぞ。」
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