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*男*
この不思議な時間はなんだろう。
名前も知らない同士が向かい合って食事をしている。
「これ、うちにある材料だけ?」
「うん、じゃがいもはチンして牛乳でのばして塩とマヨ。チーズがあればよかったんだけど。パスタもツナ缶と冷凍ほうれん草と玉ねぎで醤油ベース。」
「料理、上手なんだね。」
「一応プロだから。
って言っても今は無職だけど。」
「私もだ。私も無職。」
女は目を伏せて力なく微笑んだ。
初めて表情を変えた気がする。
「パスタも食べる。」
「うん、どうぞ。」
「うちの食料でしょ?」
「作ったの俺だからね。」
本当に不思議な感じがする。
心が凪いでいる。
「なんか、さっきより元気になってるような気がするな。」
「あー、薬が効いてるのかな。あと久しぶりにまともなものを食べたから。」
「…病気?」
「んー…。鬱病」
「…なるほど。」
「あなたはなんで犯罪を犯そうと思ったの?」
「自暴自棄。」
「なるほど。」
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