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*男*
ピンポーン。
誰か来た?と女を見ると、顔からすーっと色が落ち、青ざめるというよりは白く色がなくなった。
女はその場にしゃがみ、膝を抱え込んで固くなった。
ピンポーン、ピンポーン。
「出なくていいのか?」
と聞くと女はパッと顔を上げて悲痛な表情で首を左右に振った。
「まひろー、まひろ、いるんだろ? 電気ついてるし。
出てこいよ。」
ドアの向こうから男の声がする。
囁くような声で「彼氏?」と聞くと女は俯いたままぶるぶると首を振った。
ドアの向こうの男はしばらくインターフォンを押したりノックしたり声をかけていたが、諦めたようにこう言った。
「わかったよ、じゃあ明日も来るからな。出てくるまで毎日来るよ。」
男の去っていく足音が小さくなった。
それから10分ほど同じ体勢でいた女がようやく顔を上げた。
「…今のが鬱病の原因。」
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