南海の姫

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「大漁、大漁♪」  漁港では競りが行われていて、シエナとアルサスが持ち込んだ巨大烏賊(クラーケン)の足3本に1万イーヌの高値がついている。 「や、無事に勝てたからいいようなものだけど」 勝つ……と言っても倒すところまでは行かず、船を掴みにきた足を2,3本切り落とすと敵は退いていく。 2人が強いと言っても、船は脆弱で負けることもある。通算で2勝1敗。 巨大烏賊(クラーケン)の足が船に穴を開ければ2人の負けが確定し、それまで採った魚は敵のものになる。 「2人で島まで泳いだのはいい思い出だね」 船や装備の買い直しで大損。 ちょっと身軽(えっち)な姿になって、全力で島まで泳がなければいけない。  競りはさらに白熱している。落札が決まるまでアルサスは暇だ。 漁労長が話しかけてくる。 「巨大烏賊(クラーケン)を狩れる人はいいねぇ」 アルサスもそう思う。この辺りは魚も豊富だが、危険生物も多い。 年間で数人の犠牲者と、数万イーヌの損害で頭を痛めている。 「砦が護衛を出す案はどうなったんだ?」 砦はシエナの親の持ち物で、都から数百km離れているが兵士が駐屯している。 「魚人族(マーマン)との戦いもあるからね。戦力を割けないのさ……ってお姫様の台詞じゃないのか」 今シエナは別の漁師と恋バナしていて話には参加していないから、漁労長の台詞しかない。 島はここだけだが、近くの海底に魚人族(マーマン)が住んでいる。 大規模に返り討ちにして以来攻めてこないが、漁船の護衛に出ていて襲われましたでは話にならない。
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