南海の姫

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 漁労長は烏賊足を梱包しながら、午後のことを聞く。 「午後はケーキに紅茶、ゆっくりお二人の時間かい?」 アルサスはシエナの淹れる紅茶を思い浮かべる。 島レモンを添えた紅茶は午後の眠気を覚ましてくれる。 「確かに先月までならそのパターンだったけれど……」 頭を軽く振ってその優雅な一枚を消す。 「や、ダクラ婆さんが病気でね。薬草を採りに行かなければならないんだ」 島にある唯一の山に自生する薬草。 危険生物はいないが、山登りはちょっと危険だ。 「他の人でいいんじゃないのか?」 「こっちに移住したとき……今でも世話になっている人だから」 どの国でもそうだが移住するとたいがい嫌がられる。 文化度が違うことが大きいが、ダクラ婆さんは昔魔法図書館の司書をしていたらしく都会的だった。 話が合えば溶け込める。1人味方になれば、段々と輪が広がっていく。 「海に山にたいへんだねぇ」 「こっちの利益もあるからあまり感じないさ」 ゲソだけだとどこかの居酒屋と一緒。 食卓の見栄えが悪いからキノコや山菜を採っておきたい。
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