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シエナは薬草をぐつぐつ煮ている。
釜は魔法学をやっているからかマジカルな模様が描かれている。
オタク系統な詠唱をしながら魔法薬を作る時に、この模様が影響するらしい。
「マジカルゥ~マジカルゥ~くるっとポン!」
普通の薬を作る時には、恥ずかしい以外の特典はない。
「作ってるときに誰も来ないといいなぁ」
近所の評判に不安を覚えながら、アルサスは薬草から作るポーションの色を見つめる。
泡立つ釜の液体。今は草の色そのままの紫で毒々しい。
「本当に効くのか?」
「大丈夫だよ。ダクラさんの所に持ち込まれた薬草の本のレシピ通りだから!」
薬草の本は変態魔法使いが所有していたらしい。
詠唱は魔法使いの趣味で付け加えられていた。
「中和剤を入れて、ほらっ」
紫色が澄んだ青に変わる。香りも草臭いものから香水に近い匂いに変わる。
「や、詠唱が効いていたんだなぁ」
この島の薬草自体はアルサスも煮たことがある。
シエナの作ったそれは、大病院にも置ける高級そうな雰囲気を醸し出している。
「お薬渡してくるね~」
「大丈夫かなぁ」
走り去るシエナを見送りながら、アルサスは心配する。
ダクラさんは最近ボケが入ってきて食後の薬を飲み忘れる。
「……平和だなぁ」
来週にはお騒がせ連中が来ることをアルサスは知らない。
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