あたしは不幸体質!!

10/11
前へ
/112ページ
次へ
 それは沙夜ちんだっておんなじだ。この夏、沙夜ちんは好きな人と両思いになって、あたしは不幸の星の支配から抜け出して、あたしたちはふたりとも幸せを掴みとる。 「これまでで最高の夏休みにするからね、沙夜ちん!」  そう宣言したときだった。頭のてっぺんにガツーンとなにかが直撃した。 「いったーああーー」  両手で頭を押さえしゃがみ込む。 「ちょっと、大丈夫?」  沙夜ちんが慌てた声を出す。 「くぅぅー、なんなの、もー」  涙で滲む視界のなかに、なにか金色のちいさなものが落ちている。頭を押さえたまま、半分欠けたメダルのようなものをつまみあげる。 「なに、それ。どこから落ちてきたの」 「知らないよう」  涙を払いながらよく見ると、欠けたメダルと思った物はなにかのアクセサリーだった。  三日月を人の横顔に見立てたデザインで、伏せた目と魔女のような長く尖った鼻がついている。口元にはうっすらとした笑いを浮かべている。  沙夜ちんがブブッと吹き出した。 「言ったそばから不幸発動じゃん」  そう言うなり、だはははっと笑いだす。 「やっぱ、みつきの不幸は手強いって。普通そんなのぶつからないもん」  沙夜ちんの言う通り、どうしてこんなのがわざわざあたしの頭めがけて飛んでくるのか。  おなかを抱えながら、ひーひーと笑う沙夜ちんを横目に辺りを見回す。これをあたしにぶつけたとおぼしき人は見当たらない。炎天下の街を歩いてるのは、ぐったりとして息も絶え絶えという人ばかりだ。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加