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それは沙夜ちんだっておんなじだ。この夏、沙夜ちんは好きな人と両思いになって、あたしは不幸の星の支配から抜け出して、あたしたちはふたりとも幸せを掴みとる。
「これまでで最高の夏休みにするからね、沙夜ちん!」
そう宣言したときだった。頭のてっぺんにガツーンとなにかが直撃した。
「いったーああーー」
両手で頭を押さえしゃがみ込む。
「ちょっと、大丈夫?」
沙夜ちんが慌てた声を出す。
「くぅぅー、なんなの、もー」
涙で滲む視界のなかに、なにか金色のちいさなものが落ちている。頭を押さえたまま、半分欠けたメダルのようなものをつまみあげる。
「なに、それ。どこから落ちてきたの」
「知らないよう」
涙を払いながらよく見ると、欠けたメダルと思った物はなにかのアクセサリーだった。
三日月を人の横顔に見立てたデザインで、伏せた目と魔女のような長く尖った鼻がついている。口元にはうっすらとした笑いを浮かべている。
沙夜ちんがブブッと吹き出した。
「言ったそばから不幸発動じゃん」
そう言うなり、だはははっと笑いだす。
「やっぱ、みつきの不幸は手強いって。普通そんなのぶつからないもん」
沙夜ちんの言う通り、どうしてこんなのがわざわざあたしの頭めがけて飛んでくるのか。
おなかを抱えながら、ひーひーと笑う沙夜ちんを横目に辺りを見回す。これをあたしにぶつけたとおぼしき人は見当たらない。炎天下の街を歩いてるのは、ぐったりとして息も絶え絶えという人ばかりだ。
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