嘘みたいな本当みたい?!

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 この世界に移動したせいか、ウェインはいつのまにかゆったりとした衣装をまとっている。砂漠の国の衣装に似ているのは、砂の大地のせいだろうか。あたしは学校のセーラー服のままだ。 「それで、地球がどうしたって?」 「……やっぱ、いい。後で聞く。それより、さっきの黒マントの男ってどうなったの。また襲ってきたりしない?」  まずは安全を確かめよう。この世界のこともあの地球についても聞きたいけれど、ここが本当に月世界なら、またあの魔法使いのような相手が襲ってくるかもしれない。 「さっきの奴なら心配しなくていい。リグルをほとんど奪ってやったから、奴には逃げる以外に手がなくなったのさ」 「リグル?」 「この世界で活動するための力のことだ。だれの心にも宿っている精神の力さ。リグルが尽きれば動けなくなる。あいつはわずかに残ったリグルを使って撤退したんだ」 「じゃあ、それを回復させてまた襲ってくるってこと?」 「いや、リグルは食事や睡眠で回復するものじゃない。回復には神殿の儀式を受ける以外にないんだ。それも二十九日おきにしか行われない。緊急のときは誰かと分け合うこともできるけど、そうすると与えた側も次の儀式までの予定が狂ってしまうから家族のような間柄でもなければ」  ウェインはサクサクとした砂地を歩きながら、リグルという力について、少量なら分け合うことはあっても戦闘に出てこれるような回復はできないと言った。二十九日分の酸素ボンベみたいなものだと思えばいいんだろうか。地球から来たあたしは関係ないのかな。  風化した大岩を回り込むと、そこは何百メートルもある切り立った崖になっていた。かなたに高い塔が見える。 「あれがムーンフェイスの王都ティコだ」  大きな街だ。建物が塔を取り巻くように集まっている。まだだいぶ遠いけれど、あんなところまでどうやって歩いていくつもりなの。 「ここから跳べばいいのさ」 とぶ? そう聞き返すまえにウェインはあたしの腰に手を回した。 ちょっ……、振り払うより先にウェインは駆け出し、短い助走にあたしを巻き込んで跳躍した。
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