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はやく帰って着替えたいとあんなに言っていたのに、沙夜ちんはマックに寄っていこうと言った。育ち盛りのあたしたちは、いつだっておなかが空いている。
「いまならプラス五〇円で飲み物をシェイクに変更できますが、いかがですか?」
大学生くらいの店員さんが、夏のキャンペーンを勧めてくる。沙夜ちんは「じゃあ、あたしバナナシェイクにしてください」と一瞬も迷わずにオーダーした。沙夜ちんは自分のトレーを持つと「先にいってるよー」と荷物を置いたテーブルへすったかと歩いていく。
店員さんが目線で訊ねてくる。あたしのドリンクはどうするのか、と。メニュー表にあるストロベリーシェイクに目が行くけれど「あたしはいいです」と答えた。
「オレンジ、じゃなくてスプライトください。氷入れないでください」
トレーを持って沙夜ちんのいるテーブルに向う。お昼にはまだ間があって店内は空いている。それでも慎重に、周囲に気を配りながら歩く。
向かってくる人はいないか、床が濡れたりしていないか、確かめながら席まで来たときには沙夜ちんはもう半分ほどバーガーをおなかに納めていた。テリヤキソースとマヨネーズを口の端につけ、すこしモゴモゴしながら「発動してない?」と言った。あたしの身に不幸なことが起こってないか、と言う意味だ。
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