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「ちょっと貸してくれ」
石をつまみ取ったキースさんは、あちこちから眺め、透かし見る。手のひらに握り込んで目を閉じ、なにかを感じ取ろうとするけれど、やがて首を傾げて石をシラーさんに戻した。
シラーさんも同じことをして「……なにも起きないわ」と言った。
「でも……」
シラーさんはあたしの手に石を置くと、そのまま手を重ねる。
「やっぱり」
石だけではなんの効果もない。けれど、石を持ったあたしに触れるとリグル──月の人たちが行動するための精神の力──が回復するという。どうしてそんなことが起こるのかわからない。
なにはともあれ、キースさんたち家族三人の体に触れ、リグルを回復させる。石は消耗するわけでも、あたしの体に変化があるわけでもない。何かを吸い取られるような感覚もない。
「すごいな。夢を見ているようだ」
あたしと手をつないでリグルを回復させたのに、それでもキースさんは信じられないという顔をしている。
「なにを呑気なこと言ってるの!」
シラーさんが真剣な目をして言った。
「はやくみんなを呼んで! ミツキちゃんにリグルを回復させてもらって塔へ行くのよ!!」
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