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四人で手を繋ぎ、リグルを分け合う。どうやら僕よりも、アーキスさんの回復量のほうが多かったみたいだ。どうしてリグルが回復したのか、どうしてアーキスさんのほうが多かったのか、ミツキ様が関係しているらしいという以外は、なにもわからない。
扉の破壊は、魔法を得意とするウェイン様にお願いすることになった。
多めにリグルを受け取ったウェイン様が扉の前で呪文の詠唱を始める。左右の掌に黄煌色の光が宿り、腕へと広がっていく。
ウェイン様は光る掌を扉へ当てると、一瞬の間を置いて掌底を打った。とたんに扉はバラバラに砕け、金の砂粒となって空中に消えていく。まるではじめからそうだったように、ぽっかりと貴賓室と廊下がつながった。
見張りも通路を行き来する人もいない。当然だ。月の住人ならだれもが最大限のリグル節約に入っている。
角まで小走りで移動し、誰もいないのを確かめてまた走る。なんて素晴らしいんだろう。こんなに動いてもリグルの心配をしなくていいなんて。
それでも地面近くまで下りてくると、ちらほらと人の姿がある。塔に勤める者か、通り抜けて家へ帰る市民のどちらかだろう。
「誰も来ないように見張っていて」
アーキスさんは僕を見張りに置くと、物陰でふたりの王子の纏を直し始めた。身分の高さを示す長衣を巧みに内へと折り込み、紐の結びを少なくして位置も変える。ウェイン様の髪を下ろしてクシャクシャと乱し、アルター様の長髪は後ろで緩く雑に編む。手のひらに紅をわずかに伸ばして衣に擦り付けると、古びて落ちなくなった色斑のようになった。
同じように顔へ擦り付けると、濃くなった肌の色は粗野な印象に変わった。
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