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「いえ、ライナーが市民たちを動かすのに一役買ったのは間違いありません」
信じられないという顔をしている父さんの背後へ、ハッピースター様が流されるようにやってきた
「みんな、よかった。ライナーも無事なのね」
「お、おまえ、本当に女神様と知り合いなのか」
「だからミツキ様は女神様じゃないって。最強のハッピースターで、救世主様なんだよ」
父さんが目を白黒させている横で、ミツキ様はひとり、ん? という顔をして「それより、なんでふたりはそんなおかしな格好してるの?」と王子たちに言った。
「ちょっと考えがありまして。何も言わずにいてください、救世主様」
アルター様が答える。父さんは、なんのことかわからん、といった顔で、
「ともかく、おまえ、あとで家に顔を出しなさい。俺は前に行くから。女神様、どうかライナーを頼みます」
と集団の前へと戻っていく。女神様じゃないって言ってるのに。
集まった人たちは塔を上へと登りながら「神殿の封鎖をやめろ!」「価値観を矯正するな!」「女神様が味方だ!」と叫びを上げる。集団の後方から付いていくと、さっき武装兵が封鎖していた神殿への登り口は解放され、みんなそのまま神殿へと登っている。
暗い階段を登り詰めたとき、ハッピースター様が「わあ」と声を上げた。
暗い大空間になっている神殿は、上に行くほど細くなるガラスの円錐の内側で、透けて見える外は何故かいつも真っ暗な星空だ。床がほんのりと青く発光して、辺りを照らしている。
暗くて青いガラスの神殿はいつ来ても綺麗で、ハッピースター様にもゆっくり眺めてもらいたいと思った。でも、いまはそんな場合じゃない。
裏切り者のラモント執政官の姿がある。司教が啓訓を垂れる高い円柱があって、そのうえから腰が引けたようになりながら僕たちを見下ろしている。足元にはクラビウス大司教を跪かせている。
神殿へ登る階段を守っていた四人の武装兵もいる。床の中央で市民に取り囲まれて小さくなって座っている。巨体のひとりは事態についてこれていないのか、マスクの下から目だけをのぞかせキョロキョロとしている。
「そこから降りてこい、ラモント!」
円柱のうえへ向かって、町のみんなが声を荒げた。おどおどとした目を向けながら、ラモントは「聞いてくれ!」と叫んだ。
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