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「先生のことは冗談で言ったけど、人って、いつ、なにがあるかわかんないわけでしょ。だったらあたし、ちゃんと好きだって伝えたい。本当にそんなことになったら、あたしぜったい後悔すると思うから」
「沙夜ちん……」
あたしの親友はやっぱり格好いい。きっぱりと決心し、自分から突き進もうとする、そういう強さに憧れる。
「あー、でも、なにがあるかわかんないのは、あたしよりみつきのほうだよね」
「ちょっと……?」
「だって、みつきの不幸体質、ほんとにヤバいじゃん。このままだと一生失恋し続けるんだよ?」
「なっ……?!」
「失恋だけじゃないよ。どんなに実力があっても、みつきは受験も就職もかなりヤバい」
沙夜ちんはカップを握ったまま、指をあたしに向けた。
た、たしかに……。このままだとあたしの人生、そういうことになる。
「…………あたしも決めた」
「ん? なに」
「不幸体質、改善する」
「できんの?」
「わかんないけど、あたしだって人生後悔したくないもの」
おおー、と沙夜ちんが大げさに言う。
「そうだよ。みつき」
沙夜ちんの言うとおり、このままじゃあたしの人生、やばいことになる。あたしはいつも身構えている。どこから不幸が襲ってくるかと臆病になってばかりいる。これってたぶん、よくないことだ。あたしも沙夜ちんのようになろう。なにかアクシデントが起こったとしても自然体のまま「あちゃー。ま、しゃーないか」とか「そんじゃこうするか」とか、その場で受け入れたり対処したり、沙夜ちんならきっとそうする。
なにが起こっても、その場で、柔軟に、臨機応変に対応できる、そんなあたしにあたしは変わる。この夏休み中に、あたしはあたしを絶対に変える!
食べ終わったトレーを片付けようとして、いつもの癖で周りに目を向けそうになる。わざと前だけを見てズカズカと足を出す。力をこめて扉を押し開け、外へ踏み出す。途端に灼熱の太陽が照りつけてくる。
「あっつーー」
地面を焦がさんばかりの容赦ない熱量だけど、いまはこの強烈なエネルギーがあたしの力になる気がする。手をかざして見上げた空はどこまでも真っ青で、ザ・夏って感じの大きな入道雲が浮かんでいる。
「なんか、みつき、気合入った顔だね」
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