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よくもそんな作り話を!
「ミツキちゃんはそんなこと言ってなかった!」
前のほうから女の人の声がした。シラーさんだ。
「執政官、あなたのことなんか話してなかったわ。それに、ミツキちゃんは自分がリグルを回復させられることも知らなかったのよ!」
「そうだ、俺が見つけたとき、あの子はひとりはぐれて泣いていたんだぞ」
キースさんも。ここからじゃよく見えないけど、あのふたりは本当は裏切りたくなんかなかったんだ。
ラモント執政官は不快そうに言い返す。
「おまえたち、確かキースとシラーだったな。なぜ、そんなことが言える」
「泣きながら教えてくれたぞ。ウェイン王子とアルター王子とともにティコから来たと。本当は地球からきたと言っていた」
けれど、ラモントのつぎの言葉に、集まった人たちは動揺した。
「さてはおまえ、王子の、いやリバースの仲間だな」
「なにを」
「だから迷いも見せず、誰よりも早くリバースに従うと宣言を済ませたんだろう」
集まった人たちがざわつく。
「そ、それは、リグルを守るために……」
「気をつけろ! 宣言を済ませている者は他にもいるぞ。やつらはハッピースターをリバースへの手土産にするつもりだ」
「ちがう。なんでそんなことになるんだ!」
暗いアリスタルコス大神殿のなかで、人々が互いに距離を取った。床からの光が、目を向け合う顔を照らす。
「寝返りを命じたのは、アルター王子とウェイン王子だ!」
ラモント執政官が円柱の上からもう一度声を響かせた。
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