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「私はそんな命令は出していない!!」
凛とした声があがり、ラモントの声をかき消した。みんなが一斉にこちらに目を向ける。
「誰だ?」
「うそ?! アルター様だよ!」
「ウェイン様もいる!」
おかしな変装をしているふたりの王子を、みな徐々に見抜いていく。
「ラモント執政官、私はそのような命令は出していないぞ」
アルター王子はもういちど繰り返す。射抜くような鋭い眼差しがラモントに向いている。
「おまえ、どうやって部屋から……」ラモント執政官は声を震わせる。
「あたしも、そんなひと知らないわ」
ようやくあたしも、つまらない作り話を否定する。ラモントは「あうあう」と声にならない声をあげる。
ラモントの足元に跪かされている神官だか司教だかの格好をした人が体を動かした。
「もう観念せよ、ラモント」
身をよじってそう言った人を、ラモントは「うるさい」と声を裏返し、殴りつけた。息を呑んだみんなのまえで、あろうことか円柱から突き落とした。幾人もが落下点に飛び込み、身を挺して守った。
なんて人! そう思ったとき、
「もういい! ヴァスコ、やれ!」
ラモントが誰かに、何かを命じた。
「グォオオオ」
突然叫び声があがった。
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