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30分後。
僕は神代さんのひとり暮らしの部屋に
足を踏み入れていた。
ピンクとベージュを基調としたかわいい
装飾の部屋の真ん中で、
僕は初めて神代さんに抱きしめられた。
「もう、川瀬くんのことはいいのね?」
「はい。今すぐにでも、忘れたいです」
「じゃあ覚悟して。私のことだけ見て」
そう言うなり、
神代さんが僕の右頬にキスをしてきたので、
僕はビクッとカラダを震わせ、目を閉じた。
ああ。まさか、こんなことになるなんて。
でも、きっとこれで良かったんだ。
と、相反する思いが心の中を流れていく。
「葵くん。大好きよ」
神代さんに耳元で囁かれたら、涙が出た。
「何で、泣いてるの」
目を開けると、
神代さんは微笑み、僕を見つめていた。
「忘れたいんだよね?」
指先で頬に伝う涙を拭ってくれた神代さんに
腕を伸ばして抱きついた。
「はい、すみません‥‥」
謝りながら、神代さんの温もりを確かめる。
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