3.対極

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30分後。 僕は神代さんのひとり暮らしの部屋に 足を踏み入れていた。 ピンクとベージュを基調としたかわいい 装飾の部屋の真ん中で、 僕は初めて神代さんに抱きしめられた。 「もう、川瀬くんのことはいいのね?」 「はい。今すぐにでも、忘れたいです」 「じゃあ覚悟して。私のことだけ見て」 そう言うなり、 神代さんが僕の右頬にキスをしてきたので、 僕はビクッとカラダを震わせ、目を閉じた。 ああ。まさか、こんなことになるなんて。 でも、きっとこれで良かったんだ。 と、相反する思いが心の中を流れていく。 「葵くん。大好きよ」 神代さんに耳元で囁かれたら、涙が出た。 「何で、泣いてるの」 目を開けると、 神代さんは微笑み、僕を見つめていた。 「忘れたいんだよね?」 指先で頬に伝う涙を拭ってくれた神代さんに 腕を伸ばして抱きついた。 「はい、すみません‥‥」 謝りながら、神代さんの温もりを確かめる。
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