9年目の冬Ⅲ

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それから蒼空君が再び口を開いたのは案の定あの自動販売機の越えてすぐのこと。 「この共存中、もし花がしんどいばかりの日々だったとしても俺は違うから。謝られるとそれを否定された気になるから、もう謝らないでほしい」 「でも私と共存していなければすんなり理系に進んでいただろうし、他の子たちとももっと仲良くなって、恋人だっていたはず」 「自分が生きなかった世界なんてどうでもいいよ」 マフラーに埋めていた顔を上げて私の言葉を遮って吐き捨てるように言った言葉が白い吐息に変わる。 「俺が花のことを好きだと思って過ごしてきたこの期間を受け入れなくてもいいから否定はしないでほしい」 蒼空君は語気を強めてそこまで言うとそこからは返答を必要としないというような態度でこちらを向くこともなく行く先だけを見つめて淡々と歩みを進める。 目の前で水風船が割れたような、聞き流すには大きすぎた衝撃。 でもそれに対しての明確な答えを今は持てず、愛おしさは確かに存在するけれどこの気持ちが共存による錯覚であることも否めない、そんなちょうど境界線の真ん中に立つ曖昧な私が返すことのできる言葉を見出すこともできなくて。 そのまま私たちは隣り合ったまま言葉を発することなく、家路に着いた。 自分の家のドアノブを握って「また、明日ね」と久し振りに出した声に対して蒼空君は「うん」と頷き、私がドアを開けて家に入りまたドアが閉まるまでを見届けてくれる。 あまりに普段通りな今日の終わり。頭の中で言葉どころか形にもならない感情が浮遊するこの状態だけの私だけが異常だった。
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