黒縄地獄

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黒縄地獄

 猫の泣き声で目が覚めるという最高の贅沢で目を開けると、茶トラ白の猫がおすわりして俺の顔を覗き込んでいた。  胸の上には誰も乗っていない。  ほんの少し残念に思いながらも、最高の目覚めに俺は口元を緩ませながら辺りを見回し、猫で埋め尽くされる光景に目を細めた。 見渡す限りの猫、ねこ、ネコ、Neko… 「また猫だらけの天国か」 「地獄だよ。お前、前の地獄をクリアーしてきた罪人だな?つか絶対前の階層でもやってるだろお前。そんな『最高の朝だぜ』的な事ぉ言っても所詮地獄だからな?苦しむことに変わりはないんだぜ?」 ツッコミがくどい…と思いつつ声の主を探して辺りを見回すと、足元に小柄な男性が立っていた。 「次はどんな天国だってんだ?」 「だぁから地獄だって言ってんだろ」 俺の問いに、男は俺の足元を顎で示した。視線を落とすと足元には、紐の先に小さなネズミのおもちゃが付いた猫じゃらしが落ちていた。 まさか――遊べるというのか。猫ちゃん達と遊べるというのか。 「ほら、早速おいでなすったぜ」 男が顎をしゃくる方角に目を向けると、尻尾をピンと立てご機嫌な様子の猫たちが洪水の如く何匹も私たちのほうへと向かってくるところだった。 俺はすぐさま猫じゃらしを拾い上げ、迫り来る猫のビッグウェーブを待ち受けた。猫と遊べる――しかもこんな大量のねこちゃん達と。 心が逸るのをどうにか抑え、猫じゃらしの柄を握ると紐の先についたネズミをだらりとぶら下げる。 にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー そして俺は猫の大海に飲み込まれた。 にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー にゃー
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