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「こいつら興奮して俺達の足をケリケリしてくる…おかげでもう俺達の両足は立っていられねぇ程にボロボロだ!でもその可愛さゆえ遊んでやらずにはいられねぇ!でもこの痛さには耐えられねぇ!それでも遊ばずには居られねぇ!」
「あぁ。猫じゃらしを前にした時の、あのワクワクキラキラした瞳は全てを忘れさせてくれいだだだだだ!」
「あまりの痛さに猫じゃらしを投げ捨てればその時は助かるんだ。だがな…他人が楽しそうに遊んでいるのを見るとな…俺も遊びたいって気になっちまう。そうすると目の前に他人の投げた猫じゃらしが落ちてくる…そうなると…この連鎖を止められねぇんだだだだだだ!」
「わかる!わかるぞ!他人がねこじゃらしで楽しそうに遊んでいる姿を見すとついだだだ!」
その間にも俺たちの周囲では痛みに耐えかね猫じゃらしを投げ出す者と、その猫じゃらしを拾って遊びだし、足先どころか腿にまで爪を立てられ傷だらけになる者たちがそこかしこに溢れていた。彼らは皆一様に涙を流して苦痛に耐えながらも猫じゃらしを振り続けていた。
「ぎゃあああああああー!」
悲鳴に振り返ると、クドいツッコみの男が足の指先をガブリと噛まれたようで絶叫と共に猫じゃらしを投げ出していた。涙と鼻水と涎だらけになった悲しそうな顔を俺に向け、懺悔のように訴えかけてくる。
「…そして耐え切れずに猫じゃらしを投げ捨てちまって…また拾って…これの繰り返しなんだ!恐ろしい地獄だぜ…!」
その間にも猫は俺のかかとの裏を斬り付けるようにザクリと爪を立ててくる。とうとう苦痛に抗いきれず猫じゃらしを落としてしまうと、猫はサッと猫じゃらしを咥え、尻尾を立ててルンルンで歩き去ってしまった。
解放された、という安堵と共に訪れる、猫が去ってしまったという寂寥感。猫への申し訳なさ。
すると俺の足元に猫じゃらしが転がってきた。罪人の誰かが投げた猫じゃらしだろう。
――猫と遊びたい。だが俺の足は今までにない程ズタボロだ。しかし俺の足元では数匹の猫ちゃん達がその瞳をキラキラ輝かせながらお座りで俺が遊んでくれるのを待っている。
なんて恐ろしい場所なんだ……
だが、足先を噛まれ裂かれるのならば――
「ならば…これならどうだっ!」
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