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俺は地面にドカリと胡坐をかいて腰を下ろした。
「なっ・・・胡坐だと!?しかも足先を隠すようにして座っている!!確かに足の指はガード出来るっ!」
そのまま猫じゃらしをつかみ取る。俺を取り囲む猫ちゃん達が一斉に腰を下ろし、お尻をフリフリし始める。
「いくぞ!それ!」
猫じゃらしを高く掲げ、地面をこするように振り回す。猫ちゃん達はネズミを追って俺の周りをグルグルと駆け回り始めた。
「あれは…猫バター製造機!」
「猫バター製造機?」
クドい罪人の解説するような言葉に他の罪人たちが乗ってくる。
「あぁ…自分の周りを駆け回らせる事で自分への被害を最小限に留める、虎がグルグル回って最後バターになったという絵本から編み出された、猫じゃらしの奥義…!」
「お前それ絶対今考えたろ。それにあの格好じゃあ…」
「あぁ…だがあれには最大の弱点がある…!」
オーディエンスの盛り上がりを無視して猫ちゃん達と戯れていると、一匹の猫ちゃんが胡坐の上に乗り、足と足の間――股間目掛けてホリホリと穴掘りを開始し始めた。
「うっっっっだだだだだだぁぁぁぁ」
「やっぱり!股間が!股間がピンチだぞぉ――!」
「なんて幸せそうな…けどなんて辛そうなんだ!俺ぁもう…見ちゃいらんねぇよ…!」
阿鼻叫喚のオーディエンスが見守る中、俺は耐え続けた。すると足の隙間に入り込もうと穴掘りを続けていた猫は、やがて遊び疲れたのか居心地が良かったのか、とうとう俺の膝の上で丸くなって眠り始めたのだった。
「膝の上の猫ちゃんが…眠った!遊び尽くしたんだ!」
「な…なんて神々しい…あの姿こそ正に猫を抱いた仏の様だ!」
取り囲んでいた罪人たちが俺と猫の寝姿に涙を流していた。
勝った――
勿論勝ち負けを競う事ではないが、一匹の猫と最後まで遊び尽くすことが出来たその達成感と、膝の上に眠るその愛らしさに、俺は背筋が伸びる思いだった。
その時、エリア内に放送が響き渡った
『ぴんぽーん 黒縄地獄、クリアー』
「うおぉー!クリアしやがった――!」
「すげぇぜあいつ!」
クリアか――ふと膝の上に目を落とすと、そこには1本の猫のヒゲが落ちていた。
御利益があるかもしれない、と背広の内ポケットへ大事にしまい込む。これで2本目だ。
「あ…そういえばこの後って…」
ぱかん
「やっぱりこれかああぁぁぁ!」
足元の地面が落とし床のように二つに開き、そうして俺はまた暗闇の中を落下していった。
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