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しかし――ちょっと困ったことが起きつつある。
……催してきた
見渡せばあちこちに横たわる罪人と可愛い猫ちゃん達の間に、ちゃんと公衆トイレがあるではないか。せっかくの至福の時間を自らの手で終わらせるのは非常に残念でならないのだが仕方ない。
「済まねぇ。ちょっとトイレ行ってくるから退けておくれ」
俺は両腕の腕枕を強制解除し、胸の上でくつろぐ猫ちゃんを抱きかかえると胸の上からそっと降ろしてあげた。
すると猫はくるりと踵を返し、俺の太腿に足をかけると、
「いでででで」
爪でよじ登り、胡坐をかいて座った俺の足の上にちょこんと座った。
戻ってきた――!
そんなに俺の膝の上が気に入ったのか?だが、尿意は待ってくれそうにない。
「済まん、本当にトイレに行きてぇんだ…」
俺は涙を呑んで猫を膝の上から降ろした。だが・・・
猫ちゃんは不満そうにひと声泣くと、
ズボンに爪を立ててよじよじと登り、
「いたたたたた」
俺の顔をそのクリクリおめめで見つめ――
にゃ――
「出来ねえぇぇぇぇっ!俺にはこの猫ちゃん達の希望を裏切る事は出来ねぇぇぇぇ!」
心の中で叫び声をあげながら、膝の上の猫をそっと撫でる。そうしているうちにも他の猫たちが俺の空いた場所――肩や頭の上に登ってはくつろぎだした。
打つ手が無くなった俺は、俺に声をかけてきた男へと声をかけた。
「な、なぁ…トイレ行きてぇんだよ…どうすりゃいい?」
すると男は微笑んで言った。
「我慢しろ。猫のためだ」
「が…我慢にも限界ってもんがあるぞ…その時ぁ…」
いつの間にか丸くなっていた俺の背中を別の猫がよじ登る。
よじよじ
「いだだだだだ」
膝、肩、頭、背中。俺の体で猫の乗っていない場所はもはや無いと言い切れる状況だ。だがそれでも尿意は絶える事無く俺を苛んでくるのだ。
俺は男に助けを求めたが、その男は諦めの眼差しを俺に向けてきた。
「…皆まで言わせる気か?」
「ま…まさかっ…」
「そう…そのまさかだよ!新入り!」
漏らせっていうのか――!
にゃー
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