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案の定、あのあとしばらく私は志乃のグループから外された。
だけど、これまで話したことのなかった隣の席の小森さんが、「このまえの広瀬さん、なんかかっこよかった」と声をかけてくれて、その一言に救われた。
明らかな演奏の上手さは全員が認めるしかなくて、優雅を伴奏者に合唱コンクールの練習は続けられた。
そんななか、予想以上に狩野は指揮者として真摯に取り組んでいた。いつものやる気のない格好のつけ方とは違っていて、私の彼を見る目はほんの少し変わった。
その狩野が志乃になにを言ったかはわからないけど、「狩野に免じて」とか言いながら拍子抜けするほどあっけなく、志乃はまた私と話すようになった。
そうして合唱コンクール本番。
全体の賞は取れなかったけれど、優雅は見事に伴奏者賞を獲ったんだ。
優雅は、だけどその後も教室の隅で同じようなメンバーとカードゲームなんかして過ごしている。
私も、今まで通り志乃のグループで過ごしている。
なにも変わらなかったように見えるけど、ただひとつ。
以前の私なら、志乃の目を気にして避けて通っていた教室の片隅。朝登校したら、そこに向かって真っ直ぐ歩く。
毎朝の、ほとんど一言だけだけど。
「優雅、おはよう」
「……おう」
歪な音階の隙間に一筋流れる、まるでユニゾンのように。
〜おわり〜
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