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side優一郎
「おーい?おーーーい優一郎?お前大丈夫かほんと」
「……え、なに?」
「なに、じゃねえよ。お前ここんとこぼーっとしすぎじゃね?」
いつのまにか4限が終わって昼休みに入っていたらしい。ほとんど内容は覚えていない。その理由は既にわかりきっているが、解決するすべが見つからない。
シキに会えないと言われて既に1週間が経過していた。理由はなにもない、ただ会えないと。そう言われてしまっては行くに行けない。
メッセージも返ってこない。既読にはなるけど、ただそれだけ。
どうするべきなんだろう。どうすればもう一度シキに会って貰えるだろう。そう考えるうちに、また数日が過ぎる。そんなことをここ数日続けていた。
「そういや最近滝沢と仲いいらしいじゃん?」
「……ああ、まあ、うん」
滝沢がどうしてもと言うから、一昨日から塾に行く時も送っていた。帰りももちろん迎えに行っている。シキといる時間を代わりに使っている状態だった。
優一郎的にはただやって欲しいと言われているからやっているだけで、仲がいいという認識はなかった。そっか、周りから見るとこの行動は仲良く見えるのか。
「滝沢狙っちゃうのか〜?」
「狙う?」
「いじらしいヤツめ!さっさと食わないと誰かに持っていかれるぞ!」
食わないと、という発言にようやく村山が優一郎と滝沢をくっつけようとしていることに気づいた。
「そんなんじゃないよ」
「はぁ〜?…まあでもお前なら選びたい放題だろうしな」
自分が多少ほかの人よりは優れた容姿を持っていることは知っていた。でもシキはそういうのを関係なくただ普通に接してくれる。それもシキといると居心地が良かった理由かもしれない。
シキに会いたい。もう無理だ、会いに行こう。優一郎は深呼吸をして、スマホで今日会いに行くねと送った。すると直ぐに既読がついた。またいつものように返信はないかと思った矢先、意外にも返事が来た。
『きちゃだめ』
……なんで、そんなことを言うんだろう。俺がなにかしたからだろうか。
『どうして?俺、シキになにかした?』
『せんせいが』
まさか、シキが泣いていたあの時先生が何かしたんだろうか。今すぐにでも抗議の電話を入れてやろうかと思ったら、もう一度シキから連絡が来た。
『先生がおれをなぐってるからだめ』
優一郎は村山に帰ると告げて教室を飛び出した。呼吸が荒い。先生ってことは、シキの所に来る定期検診を行う先生のことだろう。
だとしても、どういうことだ。なんでシキが先生に殴られなきゃならない?もしかしてここ1週間会えなかったのも先生がずっと居たから?
すぐに会いに行けばよかったと後悔しながら、優一郎はシキの元へ走った。
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