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『ねむれないの?』
その子はひそひそと私に話し掛けてきた。
『ぼくも、ねむれないんだ』
そう言われて、私は安心した。
一人じゃないのは心強い。
その子はそっと手を差し出してきた。
手を繋ぐと私はいつも安心した。
私はもう知っている。
その子が、いつも私に合わせて起きていてくれたことを。
今思えば本当は眠たかったのか温かくなった手をいつも差し出して、うつらうつらしながら眠るのを我慢して起きていてくれた。
私だけが取り残されてさみしくなったりしないように。
その子は眠そうに、けれどいつも私に笑いかけてくれた。
その顔を見るのが好きだった。
そして、私はいつの間にか眠りに落ちていたんだ。
「あれ?」
いつの間にか息子の声がしなくなっている。
あのお昼寝タイムの時みたいに静かだ。
泣かれるのが大変だとばかりいつもは思っているけれど、声がしないとそれはそれで不安になる。
私一人、取り残されたみたいで。
変な気分。
息子の様子を見に行こうと立ち上がろうとしたら、夫が居間に入ってきた。
「あれ、寝てなかったの? こっちはやっと寝てくれたよ」
夫の顔を見てなんとなく安心する。
子どもにするみたいに、夫が私の頭を撫でる。
「大丈夫。ちゃんと俺が見てるから、眠ってていいよ」
「うん。ありがとう」
言ってから私は付け足す。
「あの時みたいに手、繋いでくれる」
「え? いつのこと?」
「保育園のお昼寝の時」
「いつの話だよ」
夫が笑う。それから私の隣に座った。
そして、私の手を握る。
あの時と同じように温かい。
私は夫の肩に身体を預ける。
今度は、ちゃんと眠れそうだ。
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