3章 恋心

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***** 気分転換のための小旅行も終わり、また学校生活が始まった。 放課後、図書館へやってきた伽耶は、授業の課題を済ませ、雑誌コーナーに置いてあったレジャー誌を眺めていた。 図書館にいるのは要と一緒に帰るためだった。要の専属運転手である玉城が家族の見舞いのために、しばらく週に一回休みを増やすことになり、伽耶の専属運転手である二宮の車で二人一緒に帰ることになったからだ。 すでに婚約発表をしているし、遅い時間帯なら校内に残っている生徒の数も少ない。ということで、週に一回は生徒会の仕事をしている要を図書館で待つことになった。 帝桜学園の図書館には書籍以外にも、雑誌やDVD、CDなども豊富に取り揃えられており、暇つぶしにはうってつけの場所。テスト前になると、テスト勉強に励む生徒たちで溢れかえるようだが、今は人も少なく、ゆっくりと過ごすことができる。 しかし、雑誌のページをめくる伽耶の手は止まっており、読む進めている気配はない。 「はあ……」 ため息が溢れる。ホテルで一緒に朝を迎えたあの日以降、要を前にすると、どこかぎこちなくなってしまう。 顔を見ると、どうしてもあの時のことを思い出してしまい、心臓がうるさくなる。それは日が経っても同じだった。 止まっていた手を動かし、雑誌のページをめくる。記事の内容は、家族連れ、友人同士、カップル別のお出かけスポット特集。施設別に編集部のおすすめポイントが記載されていて、分かりやすい。 と、ふと見えた文字に手を止めた伽耶は、元に戻ってそのページを見返した。 『デートにうってつけ!絶対行きたいお出かけスポット10選』 目立つ色の見出しもそうなのだが、伽耶の目を引いたのは、その中で紹介されていた郊外にある植物園の写真だった。 カラフルな花がずらりと並ぶ花壇が写っており、「編集部のおすすめポイント」のところには「季節の花が何百種類も楽しめる!」と紹介されている。 (……ガーベラが綺麗) そんなことを考えながら、施設紹介の詳細を読んでいると——。 「……行きたいのか?そこ」 後ろから声が聞こえ、驚いてた体がびく、と揺れた。 ちらりと後ろを振り向けば、そこには伽耶の手元にある雑誌を凝視する要の姿があった。
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