3章 恋心

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「要さん……!もう終わったんですか?」 読んでいた記事がデートスポットだっただけに、何だか恥ずかしくなった伽耶は慌てて雑誌を閉じた。不自然に早口になり、動揺してるのが要にはバレバレだろうが、本人は「ああ。遅くなって悪かったな」と言うだけだった。 辺りを見渡すと、いつの間にか外は暗くなっており、周りにいた生徒たちもほとんどいない。先ほどのページに触れられなかったことに一息ついた伽耶だったが、それも束の間。 「で、どうなんだ?」 要は座っている伽耶の後ろから雑誌を開き、ページをパラパラと捲り出す。話はまだ続いていたらしい。伽耶は「えーっと……」と言葉に詰まらせる。 (距離が近い……!) 触れてしまいそうな、背中に感じる気配に、耳元で聞こえる要の低い声がくすぐったい。 そんな伽耶にも気づかず、ひたすら雑誌のページをめくっていた要の手が止まった。雑誌に目線を戻すと、先程まで伽耶が見ていた特集記事のページが開かれていた。いたたまれなくなった伽耶は、「ここに載ってるガーベラが綺麗だな〜って見てただけで……」と言い、言葉を濁す。 「……確かに、綺麗だな」 要がガーベラの写真を指でなぞる。そのまま黙ってしまった要の横顔を覗くと、目線は雑誌に向けられたまま。 「帰りましょうか!もう、こんな時間……!」 伽耶がバッと勢いよく立ち上がると、要も手元の腕時計を見て「そうだな」と呟いた。 「もう二宮が着いてる頃だ。帰るか」 「はい」 伽耶は読み終えた雑誌を片付けた後、入り口の壁に寄りかかって待っている要の元へ駆け寄った。胸のドキドキは、少しだけ落ち着いた気がする。
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