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しかし、結局それも叶わなかった。
久しぶりに顔を合わせて告げられた言葉は、婚約の話といえども、実質この屋敷から出ていけという言葉と同義だ。
もういらない。そう言われた気分だった。
「結婚など、所詮紙切れ上の契約だ。愛などなくても結婚はできる。西園寺家に嫁げば、お前は今後なに不自由なく暮らせるんだ。悪くない話だろう」
他人事のようにそう話す父に、伽耶の心はずしりと重くなる。
跡継ぎとしての役目を果たせない自分は、こんな形でしか両親の期待に応えられないのか。となれば、伽耶が出す答えは一つしかない。
「……分かりました」
そう言うしかなかった。
伽耶がイエスという返事をしても、父は「詳しいことはメイド長に聞いておけ」と彼女をちらりとも見ずに、そう告げるだけ。
静まり返った広間には食事をする音が虚しく響き、誰も何も喋らない。伽耶はそっと2人のことを盗み見たが、無表情の2人は、ただ淡々と料理を口に運ぶだけだった。
娘の事なんて何とも思ってない、そんな態度はいつものことだった。たった1人の娘が結婚しようとも関心がないのだ、2人には。
愛で結ばれていない彼らを繋いでいるのは、結局お金でしかない。父は愛人を作り、母はショッピングや海外旅行と派手な生活を楽しんで、お互い好きなように暮らしている。2人が求めているのは、それだけだ。
こうして婚約の話はあっけなく終わってしまい、伽耶が明日、この家を出ていくことが決まったのだった――。
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