1章 冷たい婚約者

8/37
前へ
/154ページ
次へ
しかし、あれから数時間。夕食の時間を2時間過ぎても、婚約者は帰って来なかった。 何度か間島や三上が部屋を訪れ先に夕食を用意すると申し出てくれていたが、伽耶は、その度「帰ってくるまで待ちます」と伝えていた。 そして、3回目。真島が再び伽耶の部屋を訪れると、すまなさそうに頭を下げた。 「折角こんな時間までお待ちいただきましたが、今日は先に夕食にいたしましょう」 伽耶は何時間でも待つつもりでいたが、時刻は20時を回っていた。何より間島が、これ以上は待たせられないと言うので伽耶は素直にそれに従うことにした。 「分かりました」 「大変申し訳ありません。すでに準備は整っておりますので、早速広間に参りましょう」 「ええ」 それにしてもこんな時間まで生徒会の仕事があるなんて、大事な行事でも控えてるんだろうかと、考えを巡らせる伽耶。 (うちの学校にも生徒会はあったけど、女子校だったからか、そんな遅くまで活動していた記憶はないけれど……) 部屋を出た伽耶は、間島の背中を見つめながらそんなことを考えていた。 婚約者が来ると分かってるのに、早く帰って来ないということは、それほど仕事が立て込んでいるからなのか。それとも、自分は歓迎されていないのか。 できればそれが前者である事を願って、伽耶は長い廊下をゆっくりと歩いていった。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加