3章 恋心

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SHRが終わり、1限目は全校集会。体育館に全校生徒が集まり、校長先生や風紀指導の先生の話を聞く。 冷暖房完備の体育館は、外がどれだけ暑くても快適だ。周りを見ると、みんな涼しげな顔をして先生の話に耳を傾けていた。 壇上で話す先生の言葉を片隅で聞きながら、伽耶はふと生徒会メンバーが並んでいる方を見た。 壇上に一番近いところに要。そして、その隣には夏希がいる。二人とも背筋を伸ばして、凛とした姿で立っていた。 要とは、朝食の時にも顔を合わせている。婚約発表が終わってから、二人は食事は一緒に摂るようになった。あまり会話はないが、それでも空席だった場所に彼が座っているだけで、伽耶はいつもと違う気持ちになれた。 その一方で、夏希の姿を見るのはあの日以来だった。幸か不幸か、当番の日が重ならなかったので会う機会がなかったのだ。 こちらから連絡を取る、という手もあったけれど、伽耶にはそれができなかった。一度でも堪えたのに、二度も彼女にあんな目を向けられたら、そう思うと、怖くて連絡できなかった。 マイクの前に立ち、司会を始めた夏希。ハキハキと、堂々と喋る彼女は、いつもと変わりないように見える。 太陽のように明るい笑顔。 そこにいるだけで周りが元気になる、そんな夏希と花の手入れをしながら話すあの時間は、もう取り戻せないのかもしれない。久々に見る彼女を前に、伽耶はそんな事を考えていた。
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