3章 恋心

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全校集会が終わり、教室に戻ってHRが終わると今日は下校になった。明日には課題テスト。土日が休みで、月曜日になるとまた通常通りの授業が始まる。 伽耶は、いつもと違って運動部の掛け声が聞こえてこないグランドを横目に見ながら、職員室へと向かっていた。夏休み前に提出していた進路希望調査用紙を、訂正したものを提出するためだ。 一学期が終わった時点では、何も決まっていなかった進路。形だけでもいいからと、とりあえず提出した紙には帝桜学園の付属大学に内部進学する書いておいた。だが、要との婚約によりその曖昧だった進路も変わった。 来年の春に帝桜を卒業したあと、要は父の会社の本社があるニューヨークの大学へ進学する。そこで勉強もしながら、本格的に仕事についても学ぶ予定だそうだ。婚約者である伽耶も、そこへついていくことになったのだ。 学科は別だが、進学先は要と同じ大学。それが伽耶の目指すべき進路となった。 「いろいろ大変だろうけど、お前ならあっちでも上手くやっていけるだろ」 伽耶の進路希望調査用紙に目を通した担任は、そういって分厚いファイルに用紙を挟み込んだ。 「ニューヨークに知り合いの教師がいるから、先生もいろいろと情報を集めておくよ」 「よろしくお願いします」 用事を済ませた伽耶は、担任に一礼してその場をあとにし、職員室の出口に向かおうとした。だが、振り向いた先には呆然とした様子でこちらを見つめる夏希がいて、伽耶の足は自然と止まってしまった。
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