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「ずっと私の憧れだった。いつも先頭に立って、みんなを引っ張る会長が……。私の憧れだったの」
遠い昔を思い出すように、夏希は窓の外を眺めていた。そこにはきっと、伽耶の知らない要がたくさんいるのだろう。
「でも、自分の気持ちを伝えることは出来なかった。……結局私は、今の関係を壊したくなかった」
夏希は、未央と要が付き合うことになったとき、どんな気持ちでいただろう。
そして、今。どんな想いで伽耶と話しているのか。気丈に振る舞い、笑顔を見せる夏希の姿に、伽耶は胸がぎゅっと締め付けられる思いでいた。
「ごめんね、伽耶にこんな話して……。ホントは誰にも言わないつもりだったけど、ちゃんと伽耶には話しておかなきゃダメな気がして」
外を見ていた夏希の視線が伽耶に戻る。夕日に照らされて、赤く染まる顔が伽耶をじっと見つめる。
「未央と会長が付き合うことになったときも、それを受け入れるのにちょっと時間がかかっちゃったの。だからこの前、感情的になったのは、そのときのことちょっと思い出しちゃったからで……。完全に八つ当たり。……ごめんね」
夏希に、どう返していいのか分からずに、伽耶は黙ったままでいた。そんな伽耶の心中を察したのか、夏希はふと笑う。
「……ねぇ、伽耶。過去の自分の選択が、今の自分をつくってるんだよ。人に言われたとかそんなの関係ない。結局、その道を選んだのは自分でしかないんだから」
曇りのない、澄んだ声をしたその言葉が伽耶の胸に響く。
「その上で、私は『会長に好きって言わない』って決めたの。その選択に、後悔はしてない。今回のことで自分はこれでよかったのかなって、自問してみたけど、やっぱり私は『仲間』として、会長の側にいる道を選んでよかったと思う」
そう言った夏希の表情は、少しスッキリしているように見えた。
「だから、伽耶も……。どんな未来でも、伽耶が後悔しない道を選んで」
「……うん」
伽耶の返事を聞くと、スッと手を出した夏希。顔を見れば、眉を下げて、少し遠慮がちに笑う夏希がそこにいた。
「仲直り、しよっか?」
伽耶は手のひらをぎゅっと握りしめた。
「……いいの?」
確かめるように夏希を見ると、伽耶の好きな、あの太陽みたいな笑顔がそこにあった。
「未央も私の友達だけど……。伽耶だって、私の大事な友達だもん」
差し出された手を強く握りしめる。諦めかけていたその手が、また戻ってきた。伽耶はそのことが、どうしようもなく嬉しく思えた。
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