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初めて赤点を取った。
高校二年生の小沢美月にとってそれは衝撃以外の何ものでもなかった。
返ってきた答案用紙の半分以上にバッテンがついており、右上に書かれた数字は三十二点。
四十点以下は三日後に追試験だと先生が言っていたのをぼんやりと聞いていた気がする。
美月は勉強が得意ではない。
かといって普段の成績が悪いかと言われれば、そんなこともない。
自分の置かれた環境に順応するタイプで、学年順位は常に中間あたりに位置する。
「圭くん助けて!」
放課後、美月は隣のクラスの真田圭一の元に駆け込んだ。
美月と圭一は幼なじみで、幼稚園からずっと一緒だ。
圭一は昔から勉強が得意で学年順位は常に上位。
だから美月は勉強でわからないところがあれば必ず圭一に聞く。
「何かあったのか?」
勢いだけで飛び込んできた美月とは対照的に、圭一は落ちついた静かな声で問う。美月が圭一に泣きついてくるのはいつものことなのだ。だからまったく動じない。
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