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「赤点取っちゃったの。三日後に追試だし、どうしよう」
「美月が赤点とは珍しいな」
「うう……」
確かに珍しいのだ。
いくら点数が悪くても赤点ギリギリセーフでボーダーラインを超えたことはなかったのに。
「勉強しなかったのか?」
「少しはしたよ……」
「少し?」
「だってだって、テスト前に休んじゃって教科書学校に置きっぱなしだったの。だから……」
「だから勉強できなかったって?」
圭一が予想して言えば美月は力なく頷く。
美月は金曜日、風邪で学校を休んだ。幸いすぐに回復して土日は元気だったのだが、月曜のテストである英語の教科書と問題集を学校に置いたままだったのだ。テスト勉強しようにも教材がないのだから仕方がない。
「そうならそうで、借りに来たらよかったのに」
「む。まあ、そうともいう」
美月は渋い顔をする。
圭一とは家も近所なのだから、借りようと思えば借りることができた。
「借りても勉強するかわかんないし、圭くんだって勉強したいでしょ?」
テスト前だというのに勉強するかわからないとは実に美月らしく、圭一はやれやれと大きなため息をついた。
「で、勉強するのか?」
「……する」
美月は三十二点の答案用紙をおずおずと差し出す。
見事なまでにバツがたくさんついており、これはしっかり勉強させないとやばそうだなと圭一は思った。
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