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模範解答を準備してやると、美月は圭一の前でノートにカリカリと書き出していく。単語は何度も書いて覚えるしかないし、追試験が同じテストをするのならば最低限模範解答を丸暗記すればいい。もちろん、理解するという上では全然よくないことなのだが。だが勉強嫌いの美月に合格点を取らせるにはそれが一番手っ取り早いだろう。
だんだんと人がはけていく放課後の教室は、気づけば美月と圭一だけになっていた。
静かな空間は美月のシャープペンシルの音と圭一の教科書を捲る音だけが耳に響く。
「……圭くんさぁ」
ふいに美月が口を開いた。
圭一は教科書から視線を美月に移す。
「何でこの高校入ったの?」
「……は?」
美月が何を言わんとするのかわからなくて圭一はポカンとする。
「いや、だからさ、圭くん頭いいんだからもっと偏差値高い高校行けたじゃん」
「美月は何でこの高校入ったんだ? 自分の偏差値より少し上だっただろう?」
美月が先に質問したのに、逆に圭一に質問されて返答に詰まった。
確かにこの高校は美月の成績からして難しいかもしれないと言われていた高校だ。勉強嫌いだが、このときばかりは必死に必死に勉強した記憶がある。過去一勉強したのではなかろうか。
なぜこの高校を選んだのか。
それは――。
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