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 この物語は、ここでおしまいだけど、私たちの夢見た未来はどうなったと思う?  本当に愛の逃避行をしたり、学校や家が大騒ぎになっていたり、そんなドラマチックなことが、私たちを美しくて切ない大恋愛へと導いたでしょうか?  どんな風に結ばれて、愛を確かめ合ったのか、まではさすがに秘密にさせて欲しいな。  ただ、もうイヤだ、を、一つずつ失くしていったの。  そして、大袈裟に傷つきやすい私の側には、いつも戸田くんがいてくれた。  信じられる?彼が執筆中にどうしても眠ってしまいそうな時には、レモンスライスを浮かべた紅茶を飲みたがるようになっただなんて。  目の下に出来たくまに口づけて、ずれた布団をかけ直してシチューを温める私は、ただいま、と元気よく玄関のドアを開ける子供に、静かにしてね、と困った顔してお帰りなさいを言うの。  ランドセルに全教科突っ込んで帰って来るから、そりゃあ重たいよね。  時間割が覚えられないんだから仕方がないけれど。  ねえ、パパが起きたら宿題を見てもらって、それから三人で出かけようよ。  何しに行くのって?  だって、今日は流星群が見られるって言うから。  少しでも高い場所から見た方が、流れ星を見つけやすいと思って。  ママってどうしてそんなに子供なの?なんて言わないでよ。  でもそうね。  ママは、自分のこんなところが、今ではとても好きなの。  そう、大好きなのよ。  まるで、パパやあなたに向ける愛と、同じくらい愛してる。  
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