秘密をやめる

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 もう、夜だと言うのに、あの小説の更新通知は、私のスマホを鳴らさない。  毎日読んでいたと言うことは、雪田とおこは、毎日更新をしていたと言うことだ。  戸田くんといる間、彼がパソコンの方を気にしている素振りがなかったので、もしかしたら彼は違うのでは?とも思ったけれど。  「あの。ねえ、戸田くん。いいよ、書いても」  「え?」  毎日更新することよりも、私と今一緒にいる時間を大切にしたい、と、向き合ってくれているのだろうか。  黙っているべきだったのかもしれないけれど、どうしようもなく気になって、それは我慢出来ないほどで、衝動性の強い私にとっては口にせずにはいられない状態になってしまう。  「あ、違ってたらいいんだけど、その、小説は、書かなくてもいいの?」  「…香歩、と、いるから。今日は」  「…でも、ファンの人が、続きを待ってる」  「いないよ、ファンなんて」  「いるの。ここに。私なの、それ。…戸田くんの物語、好きだったんだ。戸田くんと出会う前から、読んでたんだ、私」  だけどどうか、私の為に書く、だなんて言わないでね。  戸田くんの好きなことを、私が邪魔したりしたくないって思うから。  今まで通りでいいからね。  あらすじを曲げたり、の活躍を増やしたり、そんなのは望んでないの。  「…知ってたんだ。読んでて、嫌な気分にさせた?」  「なってないよ、嫌な気分になんて。でも、私に知られたくなかったよね?」  「そんなことないけど、…もう、書くのは、」  「やめないで!!書くのやめちゃうくらいなら、私が読むのをやめる!」  「…どうして、そんなにまで…」  言わない方が良いとわかっていても、我慢が出来ずに伝えてしまった。  だけど、私は戸田くんのことを応援したい。  別人を装ってコメントを残したり、励ましたりするくらいだったら、私は私としてちゃんと応援がしたかった。  どうしても、そうしたかった。
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