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香歩の過去
だって、どうして私が戸田くんの小説を読み始めたか。
そして、何年も読み続けて来たのか。
それって全部ね、中学生の頃の自分と重ねていたの。
私は、やめてしまったけど、戸田くんにはやめて欲しくない。
「…中学生の時にね、コンテスト用に描いた絵が選ばれて、学校で表彰されたことがあったの。…すごく目立たない女の子だった私にね、インタビューとか来ちゃったりして、…それで、なんでか、気に入らなかったみたいなの」
「えっと、誰が、誰を、気に入らないって」
「ごめん、私ね、話したいことを上手くまとめて、伝わりやすいように話すのがすごく苦手で…。うんと、目立つ側の人たちがね、私の絵のことで大人達が騒いでることが気に入らなかったみたいで、バレないように陰でいじめを受けるようになったの」
普段は、長い話をする時は、紙に書いてまとまるように何度も直して、それを読み上げて練習をしたりしていた。
だけど、こんな話を戸田くんにするつもりはなかったから、ちゃんとまとめて練習なんてしていない。
要領を得ない、わかりづらい、途中で飛び飛びになる話を、それでも辛抱強く聞いてくれる戸田くんに、私は途中からすがりついて、悩むのもやめて、頭に浮かんだ順から言葉を吐き出しはじめる。
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