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朝を待つ
うっとりとそんなことを言うと、戸田くんは顔を真っ赤にして枕につっぷした。
本当に一緒にベッドに入って、並んで横になってお喋りをしていたけれど、何もしなかった。
ただ、自然と会話の内容は甘ったるいものになって、それが恋人っぽくて嬉しい。
眠たくなったら寝ようね、とは言ったものの、このまま朝を迎えそうだ。
「…一応、僕も男だからね。わかってる?」
「うん。からかってるわけじゃないの。私、頭に浮かんだ言葉、すぐに口をついて出ちゃうって言うか」
「…気をつけた方がいい時も、あるかも。香歩、朝になったら家まで送るけど、…僕がご両親に伝えたいことを、聞いてもらっていい?」
「う、うん、なんか緊張するな」
「香歩さんは僕に必要な人です、大切にしますって」
やっぱり戸田くんはロマンチストなんだな。
それに引き換え私ってば、好奇心で今夜何かが起こったって良いって思ってた。
今でも、思ってるけど。
「…こんな風に、私のことを想ってくれる男性が現れるだなんて、お父さんもお母さんもビックリするだろうな」
「それは、どうして?」
「…私がこの見た目、ギャルになった時から、お父さんは心配してたの。遊びで付き合うような男性からしか、声をかけられなくなるんじゃないかって」
「それは偏見かな。…僕も、人のことは言えなかったかもしれないけどね」
ごめんね、と言って、戸田くんが布団の中で私のことを抱きしめる。
アンナコト考えていた癖に、実際にそんな雰囲気になると、ビクっと肩が震えた。
心臓がバクバクしてるのは、期待してるからじゃなくて、戸田くんが我慢してるのがわかったからだ。
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